アウトドアエッセイ

帰ってきた混浴秘湯 山崎まゆみ

●第3回● 美味しい温泉
 みなさんは、食べる温泉の楽しさをご存知ですか? 温泉で作られる食べ物は、「温泉タマゴ」だけじゃいないんですよ!
 例えば、長野県の野沢温泉では、野沢菜を温泉で湯がくのは有名な話ですね。あと、佐賀県の嬉野温泉では温泉湯豆腐が名物。また、温泉粥もあちこちの温泉宿で食べてきました。
 そんな温泉を食べ歩いた私が、厳選して“美味しい温泉”をご紹介します。

その1 大分県『温泉糖』

この温泉糖、なかなかの美味。口の中に入れると、
「しゃわしゃわしゃわ〜〜〜〜、ぱちぱちぱち〜〜〜〜〜」と、温泉糖が弾く様に溶けてしまいます。黒糖や白糖のように甘すぎずに、さっぱりとしています。パッケージには、コーヒーや紅茶にお砂糖のかわりに入れてくださいとありますが、私は疲れた時に、飴玉かわりに食べています。ふっと力が湧いてきますよ。
 この温泉糖は、製造が難しく、三村製菓のご主人でしか作れないそうです。
「毎朝、温泉を汲みに行き、温泉がさめないうちに砂糖を入れて煮詰めて、糸が引けるくらいに飴状態になったら、卵白を入れて混ぜる。そして、すぐにおろして冷やす。お湯と違い、炭酸泉の温泉を使うと、風味が違います」(三村製菓 三村さん)
 1日150個くらい、約50箱しか生産できないものだそうです。

おみやげものやさんでも、この温泉糖は人気商品で、すぐに完売してしまうのだとか。   長湯温泉のラムネの湯のこの飲泉場から湯をくみ、温泉糖を作るそうです。

その2 新潟県『温泉粥』

 越後長野温泉の源泉から湧き出る湯をひとなめしたら、「あ、昆布味!」って、感激しちゃいました。とても温泉に思えません。ここの食塩泉は、塩っ辛いだけではなく、ダシがきいていてほどよい塩味。
 そして、その食塩泉で炊く温泉粥が、嵐渓荘の名物。宿泊すると、朝食に出される粥です。口に入れるとまずは塩っけを感じますが、ダシ風の旨味が舌の両脇にじんわり広がって、深みのある味わいです。
「源泉に湧き水を足して、半々の割合で粥を炊きます。やはり温泉だけ炊きますと、塩っ辛過ぎますから」(嵐渓荘の大竹啓五さん)

毎朝、朝食で出される名物温泉粥。すりゴマをかけて食べると香ばしさが増します。   緑が薫る静かな一軒宿の嵐渓荘。もっとも渓流に近い露天風呂“山の湯”にて。

その3 台湾『温泉クッキー』

 日本から一番近い台湾の蘇奥。与那国島から望める港町で距離にしたらほんの110キロ。この潮風薫る町に、蘇澳冷泉という源泉22度の低温鉱泉の炭酸泉が湧いています。
 口に含むと、口のなかいっぱいにしゅわしゅわっと気泡が弾け飛びます。かつては、この炭酸泉に砂糖を入れてラムネを作っていたそうです。
 蘇奥の町を歩くと、冷泉涼麺や冷泉豆腐など冷泉を材料にして作る食品が出回っていました。なかでも大人気商品は、町のパン屋さんで販売している『牛舌餅』という冷泉入りクッキー。お店の方は、普通の水を使うよりも風味が違うとおっしゃっていました。
 ちなみに、お隣に礁渓温泉という温泉街がありますが、ここでは空心菜の栽培に温泉を使います。温泉野菜は、通常価格の2倍の値で売れるそうで、町をあげて温泉野菜を栽培しています。

かつて、蘇澳冷泉では炭酸泉に砂糖を入れてラムネをつくっていた。残念ながら、今はその手法は使われてはいないのですが。   蘇奥冷泉の温泉クッキー
 今、美味しい温泉を探しています。もっとたくさん美味な温泉があるはず。もし、みなさんの知っている美味しい温泉を教えてくださいませ!


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