アウトドアエッセイ

帰ってきた混浴秘湯 山崎まゆみ
●第2回● 藤七温泉(岩手県)
今月のぷ〜く、ぷく。。。便り

台風18号がやってきたあの夜、
東北最高所の露天風呂で過ごしました

 BE−PALで連載していた時に取材へ行き、とっても気に入り、その後も何度も訪ねる温泉地があります。この藤七温泉もそのひとつ。
 東北最高所の温泉の1軒宿、八幡平国立公園内に湧く火山性の温泉、1年の半分は雪に閉ざされる立地。秘湯好きの私には、魅力的な言葉が並ぶ藤七温泉です。でも、私、3度目にして、一番すごいものを見ちゃったんです!

 私が3度目に藤七温泉を訪ねたのは9月の半ば。出発前、TVのニュースで台風情報が流れていました。なにやら、ちょうど藤七温泉に宿泊する晩に、東北地方に台風が上陸するらしい。私は、恐怖というよりも荒れ狂う台風の中でのぷ〜く、ぷく。。。は、どんなものかしらと興味をそそられたのです。(笑)
 2年ぶりの藤七温泉は、やっぱり和やかに迎えてくれました。お宿の名物、岩手弁の語り口で八幡平の自然の驚異を話してくれる支配人の浅石さんの口上に聞き入り、くつろいだ夜8時。入浴しようと露天風呂へ向かったのです。まだ、台風がやってきていないものの、そろそろ暴風域に入る直前。風の音が凄まじく、身体に響く轟音です。露天風呂も壊れんばかりの勢い。外に立っていると身体ごと風にもっていかれそう。ちょっと背筋が凍ったけれど、それでも、ぷ〜く、ぷく。。。
 以前は、ただの湯溜まりだった所に人が入っていたので、私もその湯船らしき所に浸かりました。文字通りふきっさらしの中での入浴です。温泉に浸かっている肩から下は温かく、首から上は暴風にまきこまれ、髪も荒れ狂う、目も開けていられない! 風も冷たいので、温かい湯から出るに出れない状況で、その間1時間湯に浸かっていました。なんともスリリングで奇妙な楽しい時!
その晩、木造のお宿は、揺れました。ミシミシ、ギイギイ、たまにグオウン。台風って、風の音も怖いですね。

 
 そして、翌朝の5時。台風が去った静けさの中での入浴。写真をご覧下さい。こんな朝空に出会えました。混浴して一緒に朝日を拝んでいた方々も、言葉につまっていました。ため息の出るほどの見事な朝焼け。朝日が昇る前、雲が真っ赤に染まり雲海が現れました。私、三度目の正直で、初めて朝日を拝めました。

 朝風呂を終え、午前9時くらいに下の町へ降りると、幸せな風景が広がっていました。この虹です!

 藤七温泉は、毎年GW前から10月いっぱいまでしか営業しません。もう、東北最高所の温泉では、冬支度が始まります。もうすぐ、藤七温泉の今年が終わります。

★ 藤七温泉とはこんな温泉です! ★
 藤七温泉は、標高1400メートルという東北最高所にある温泉で、宿は彩雲荘の一軒のみ。八幡平国立公園内にあり、春から秋にかけては宿周辺にも160種類もの可憐な高山植物が咲く。また、露天風呂からは、トドやエゾの樹海の先に岩手富士の姿を見ることができる。

彩雲荘は、昭和5年からの営業だが、それ以前からも沢に湧く湯で人々が入浴していたという。

源泉は、宿周辺の沢の上流にあり、パイプで引き湯をしている。源泉の温度は、91度。温泉は、八幡平の山々の火山性の温泉で。単純硫黄泉がぐつぐつと湧き出ている。


藤七温泉 彩雲荘のHPです
http://www.himenoyu.com/tosichi/tosichi.html


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