アウトドアエッセイ

西表に住もう! by山下智菜美
いまやちょっとしたブームになっている沖縄への移住ですが、実際にはいろいろと大変なことが多いようで……。 2003年の夏、東京から西表島に移住したライターの山下智菜美さんが、そんな離島での生活ノウハウを少しずつ公開しています。離島への移住を考えている人は、決心する前に必読の情報です。

第90回(最終回) やまねこマラソン
―大自然の中を走った後は、打ち上げパーティで踊りまくり!―


やまねこのお面をつけて踊るおばあたちの応援に応え、走りながら男カチャーシーをするランナー。
 シーズンオフの沖縄でさかんなものといえば、マラソン。冬でも温暖な気候を生かし、那覇マラソン、石垣島マラソンをはじめ、大小さまざまな大会が開かれています。西表で行われるのは、やまねこマラソン。走るのは大の苦手な私ですが、ひょんなことからジョギングを思い立ちました。

しばらくすると、
「やまねこマラソン出るの?」
 とたびたび聞かれるように。しかしそんなレベルではありません。
「じゃ、なんで走っているの?」

 ジョギングしていると言いふらしているわけではないのですが、島を半周する1本しかない県道沿いをうろうろしているため、車で行き来する多くの知り合いに目撃されているようです。最初は正直に
「美容と健康のため」
といっていましたが、しだいに「やまねこマラソンも悪くないかも」という気になり、ついに出場することにしました。

 当日のスタート・ゴールは西部地区にある上原小学校。クラスは23kmのハーフマラソンと10km、中学生向けの3km。私はもちろん10kmコースです。

こんな華やかな応援も。


舟いっぱいの刺身はあっという間になくなる。
 13回を迎えたやまねこマラソンは年々参加者が増え、今年は大会史上初、1300人以上のエントリーがありました。人気の秘密はまず、コースの景色がすばらしいこと。特にハーフマラソンではマングローブが眼下に広がる山道を抜け、青い海がどこまでも続く海岸を走ります。住民にはなじみの風景ですが、それでも美しさに感動します。

 また沿道で受ける地元の声援もうれしいものです。ベビーカーに乗った赤ちゃんからおじい、おばあまで、ときには鳴り物を使っての熱い応援に背中を押されます。各公民館が朝から総出で準備するエイドステーションでは飲み物や給水スポンジ、黒糖などが「頑張って!」のひとことと一緒に提供され、まさにエネルギーが補給されるのです。

 しかし、なんといっても参加者が楽しみなのは、打ち上げの「ふれあいパーティ」。地元小中学生の歌や踊りに始まり、西表や近隣の島出身プロ歌手によるミニライブ、琉球祭太鼓やフラダンスなどの余興のほか、本物の舟に盛られた刺身の舟盛りが登場! 地元の人たちの手作り料理の出店に混じり、泡盛『八重泉』『請福』の振舞酒(無料)も出ます。走らないけれどこのパーティが目当て、という常連観光客もいるほどです。

 パーティの目玉は豪華賞品が当たる抽選会です。地元で捕れたイノシシやロブスターに似たガサミなどを当てた人は驚喜しています。盛り上がった最後はみんなでカチャーシーを踊りまくり、
「来年もまた走ろう!」
 といいあって、会場を後にしました。

割り箸に1000円札をはさんだハナキン(おひねり)を手に、舞台に上がってきてしまうおじさん続出。


踊れや踊れの大カチャーシー。
 ジョギングを始めた昨年11月には、100m走っても息切れしていた私が、西表の自然に見守られ、3カ月間に10km完走できるまでになりました。ジョギング以外でも今年はさらにいろいろなことにチャレンジし、やまねこマラソンではもちろん、次回は23kmに挑みたいと思っています。

今回で「西表に住もう!」は最終回になります。
長い間ご愛読ありがとうございました。


プロフィール
山下智菜美 (やました ちなみ)

東京都出身。
出版社勤務を経て、1995年、フリーに。
2003年7月、一念発起し、西表に移住。
山下智菜美ウエブサイト
「イリオモテヤマオンナ日記」
http://crakke.biz



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