2016.05.10

BE-PAL編集長大澤竜二が語る『サバイバル』愛!

0views
  • ツイートする
  • シェアする
  • pocket

P1110198

いちばん好きな漫画をひとつあげろと言われれば、俺は迷わず『サバイバル』と答える。
そんなこと聞かれたことないけど。

 1976年秋。
『少年サンデー』で『サバイバル』がはじまったとき、俺はリアルタイム読者だった。小6だ。
当時好きだったのは『一球さん』水島新司、『男組』池上遼一、『プロゴルファー猿』藤子不二雄A、そして『まことちゃん』楳図かずお! なんという贅沢な執筆陣(他に赤塚不二夫も石森章太郎もいた)!
あだちも留美子もいないサンデー。
青山剛昌はまだ鳥取の中学生ですよ!
まさか地元の空港の名前が自分の作品の主人公の名を取って「鳥取コナン空港」になるとは、知るよしもない(敬称略)。

そんな、今よりちょっと男らしいサンデーの布陣に割って入り4年の長期連載、コミックスはなんと全22巻、やがて70年代を代表する超大作漫画になっていく、さいとう・たかを『サバイバル』の記念すべき連載第一回を、今も覚えている。

「み…見えない」
「な、なにも見えない!?」

 暗闇に主人公の声だけが響くオープニング。ずーっとベタに吹き出しのコマが続く。やがて手探りで見つけた懐中電灯に照らされて初めて絵がはじまる。洞窟の中だ。やっと主人公の顔がわかるが、名前はまだわからない。

「アキラ~~!! オサム~~!! 佐藤~~っ!! タダシ~ッ!! ヒロシ~ッ!!」

 友だちの名前を叫ぶので、少なくとも主人公の名前がそれ以外だということはわかるが、なんと結局主人公の名前がわからないまま、連載第1回は終わってしまう!
唯一の登場人物の名前すら不明…。いったいどんな物語がはじまるんだ!?
強烈なインパクトを受けたのを覚えている。

翌週から、『サバイバル』はサンデーでいちばん好きな連載になっていった。飢えと闘いながら毒キノコ、ネズミ、クマなど自然の驚異に立ち向かう、少年の原始力獲得の物語に夢中になった。
切手蒐集が趣味のひ弱な少年が、鶏肉が苦手な甘えん坊が、いつのまにかクマの毛皮を着て槍を持って駆けていく!

そして童貞喪失!

アキコさーん!

P1110203

今回、全巻再読してあらためてわかった。
『サバイバル』には人間の全てが描かれていると思う。
人間の弱さも冷酷さも汚さもセコさも、これでもかと醜悪に描きながら、逆に、人間の持つ逞しさ誠実さ優しさや愚直さを際立たせる。
乗り越えた悲しみの数だけ人は優しくなれるのだ、うんうん、そうなんだ。
そして優しくなければ生きている資格なんてないんだ!
『サバイバル』は人間の美徳を描いた傑作だ。と、50を過ぎたオッサンの目は、潤む。
オッサンだけではない! 現代の少年少女、青年たちにも読んで欲しい。人間は自然に生かされているんだということを、これほど強く感じる時代、『サバイバル』は全ての文明人のバイブルになる名作だと思う。今回、『BE-PAL』の付録として復刻できて(しかも初版オリジナルを!)、俺は本当に泣きそうになった。何を隠そう、この漫画別冊の企画は俺が編集長になって最初に上司に出した企画のうちのひとつだったのだ。3年かかったが、あきらめないでよかった!

今度どこかで俺に会ったら、いちばん好きな漫画を聞いて欲しい。
俺は迷わず『サバイバル』と答える。
そして、一緒に『サバイバル』の話しで語り明かそう。焚き火を囲んで。

ビーパル編集長・大澤竜二

 P1110208

 

  • ツイートする
  • シェアする
  • pocket